医療と介護のちょうどいい関係を
千歳・向陽台で育てていきたい

木下 浩志
NPO法人ちとせの介護医療連携の会 理事長

医療・介護が連携する
土壌を耕してくれた

私たち「ちとせの介護医療連携の会」は、千歳市内のケアマネジャーや病院のソーシャルワーカー、介護職員などの有志が、職種や法人の垣根を越えてつながることを目的に、2016年に発足しました。その後、向陽台ファミリークリニックが開業されたのと同じ2017年にNPO法人化。翌年4月に千歳市から在宅医療・介護連携推進事業を受託し、在宅医療・介護連携支援センターを開設しました。ここから、向陽台ファミリークリニックとの本格的なおつきあいが始まります。

通常、こうした連携支援センターを立ち上げる際には、在宅医療を担う医師との関係づくりから始めることが少なくありません。ところが千歳市では、それ以前から中島徹先生(向陽台ファミリークリニック院長)が地域の関係者と顔を合わせ、関係を丁寧に耕してくださっていました。そのおかげで、私たちは立ち上げ初年度から、市民向けの講演会やケアカフェ、町内会での勉強会、在宅医療の普及啓発活動へと、スムーズに踏み出すことができました。

今あらためて振り返ると、当時の向陽台ファミリークリニックは開設されたばかりで、まずは事業を軌道に乗せることに時間を使いたい時期だったはずです。それでも地域の活動に惜しみなく時間を割き、積極的に関わってくださったことに、心から感謝しています。

ときには「お医者さん」の
殻を破って

千歳市に限らず、全国各地で医療と介護の多職種連携が進められています。しかし現場では、社会的地位の高い医師に対して介護側が気を遣い、関係者間に見えない壁が生まれてしまうことも珍しくありません。その点、中島先生をはじめ向陽台ファミリークリニックの先生方は、本当に敷居が低く、どんな職種の人ともフラットに接してくださいます。もちろん、介護・福祉への理解が深い医師は他にもいらっしゃいます。しかし、北海道家庭医療学センターの先生方は、相手の立場や職種ごとの役割を十分に理解した上で、地域全体を見渡しながら関わってくださる。その姿勢は一歩抜きん出ていると感じます。

特に、当会の在宅連携部会では、向陽台ファミリークリニックが中心的な役割を担ってくださっています。地域の医師、ケアマネジャー、介護サービス事業者が2カ月に1度クリニックに集まり、ディスカッションを通して、在宅医療利用者に関する情報共有を行っています。
また、当会では「バイタルリンク」を活用したICT連携も進めています。現在は市内33事業所・76アカウントで運用されていますが、この数字以上に重要なのは、向陽台ファミリークリニックの患者さんを起点として、少しずつ連携の輪が広がってきたことです。
「点」だった連携が「面」へと広がる。その過程において、向陽台ファミリークリニックは常に中核を担ってくださいました。導入時の説明会や操作説明会、意見交換会まで継続的に関わり、現場目線のフィードバックを積み重ねてくださったことが、システム全体の安定運用にもつながっています。

中島先生には、当会の副理事長も務めていただいています。
私が本当にありがたいと感じているのは、ご自身の専門領域にとどまらず、例えば介護人材不足といった課題に対しても真摯に向き合い、一緒に考えてくださることです。医療と介護を別々のものとして捉えるのではなく、業界まるごと、地域まるごとを診る。その姿勢は一貫しています。
そして、ぜひお伝えしたいエピソードがあります。私たちは毎年、市民向けフォーラムの中で、医療や介護をテーマにした演劇を行っています。中島先生には毎年欠かさず出演していただいているのですが、いつの頃からか、「介護が必要なおばあちゃん役」を引き受けてくださるようになりました。
その姿を見て笑い、温かい気持ちになった市民はきっと多いと思います。白衣を着て診察室にいるだけでは伝わらない、人柄や距離感がそこにはあります。「親しみやすいお医者さん」。そんな空気が地域に広がっていることを、日々の活動を通して強く感じています。

実は中島先生は、私の高校の4学年後輩でもあります。「とおるちゃん」と呼びたくなるくらい親しみやすい人柄で——もちろん実際にはそんな呼び方はしませんが(笑)。地域のために、ここまで汗を流し続けてくださる姿には、本当に頭が下がる思いです。

いつかは
「向陽台モデル」を全国へ

もし向陽台ファミリークリニックがなかったら……。この地域で「自宅で最期を迎える」という選択肢は、今よりずっと限られたものになっていたでしょう。地域の在宅医療を支え、多職種との関係を丁寧に築いてきてくださったことは、千歳市にとって大きな財産です。
もちろん、それは先生方の力だけではありません。泉谷事務長をはじめとするスタッフの皆さん、併設する訪問看護ステーションの鷹巣所長をはじめ看護スタッフの皆さん。地域医療という重責を担いながら、当会の運営にも力を尽くしてくださっています。

この10年で、千歳市の医療・介護の連携は確実に深まりました。その中心には、向陽台ファミリークリニックの先生方が持ち続けてきた「患者さんを中心に考える」という軸があると私は思っています。患者さん・利用者さんを真ん中に置くからこそ、職種を越えて本音で意見を交わし、同じ方向を向いて進むことができる。医療と介護、そして市民が肩を並べて地域を支える文化が、確実に育っています。
この向陽台地区から、新しい医療・介護連携の形を全国へ発信できたら。いつか「向陽台モデル」と呼ばれるような地域包括ケアシステムを築くことができたら。大きな夢かもしれませんが、それが私の率直な願いです。
中島先生と、向陽台ファミリークリニックの皆さん、そして地域の仲間たちと、その景色を一緒に見たい。そのために、これからも共に歩んでいただけたらと願っています。

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